応為坦々録

応為坦坦録 (1984年)

応為坦坦録 (1984年)

 カラっ風がザアッっと吹きすぎていったような印象を受ける。何ものにも執着せず、フラフラと江戸の町を漂った一人の女性の半生を描く。何が起こるわけでもないのに、不思議と退屈しないのは、ぶっきらぼうな江戸弁の会話が耳にこころよいからか。『百日紅』のお栄ちゃんとは共通しているところもあり、違っているところもあり。「あの」北斎の娘として、終生独り身で父とともに暮らしながら、非凡な画才を示したという人物は、女性なら取り上げてみたくなる題材ではあるだろう。それぞれの作者がどう描くのか、つぎは宇江佐真理の「桜花(さくら)を見た」を読んでみたい。