ひとつ灯せ

 題名の「ひとつ灯せ」が、唱えられるシーンによって印象ががらっと変わってくる。唱和する「ええい!」という声が最終話では実に効果的だった。
 人が怪異に引っ張られるのと、異界に惹かれる人間の心は同じもののようで全く違うものだ。話が進むにつれて、粋な遊びの趣味人と見えた「話の会」の面々が持つ尋常ならざる側面が見えてきて、じわじわと怖さが募ってきた。結局、kaiに捕まらなかったのは一人だけだったのか…。捕まってしまうのがいいことなのか、悪いことなのかも分からなくなってしまった。「怖さと寂しさは同じもの」という登場人物の言葉通りの読後感だった。
 参考書目としてあげられている「新耳袋 第六話」は、第三話の「庭のブランコ」が、登場人物の体験談の元ネタらしい。他にもあるかと思ったけど、この一話だけだった。