天山の巫女ソニン一黄金の燕

天山の巫女ソニン 1 黄金の燕

天山の巫女ソニン 1 黄金の燕

 意識を遠くに飛ばして災害や戦争の予兆を知る「夢見」の才を持つ少女たちが暮らす天山。邪な心を持つ人間には入ることのできない聖域で、十二人の巫女が静かに暮らしている。12才のソニンは生まれたときから非凡な才能を持つ者として天山に引き取られたが、長じるにつれて「夢見」ができなくなり、下界の家族の元に返されてしまう。さいわい優しい家族に囲まれて、友人もでき、天山とはいろいろと異なる下界の暮らしにもなじみ始めたころ、ソニンはこの国の末の王子と出会い、国を揺るがす大事件に巻き込まれてしまう。

 「十二国記」や(読んだことなくて無責任ですが)「彩雲国」が好きなら絶対おすすめ。
 登場人物の正義や悪意、様々な思惑が、簡潔な言葉でしっかりと描かれていて、話の展開に無理がありません。朝鮮半島がモデルでしょうか、架空の世界も実に魅力的です。その世界の仕組みに、素直で優しくはあるけれど、芯の強い賢いソニンがこれからどう関わっていくかという興味もわいてきます。こういう、前向きで純粋な主人公は、ともすれば嫌みになりがちですが、ソニンの育った環境をうまく設定して、性格に説得力を持たせているところも好感度大。しかも素直なだけじゃなくて、頭もいいところがさらによし。
 骨太とはいえないでしょうが、丁寧な造りで安心して気持ちよく読める上質の国産ファンタジーでした。