086ぼくがぼくであること

ぼくがぼくであること (岩波少年文庫 86)

ぼくがぼくであること (岩波少年文庫 86)

 4人兄弟の三番目、6年生の秀一は、優秀な兄たちと常に比べられ、叱責ばかりの毎日を送っていた。母親の説教に反発した秀一は、家出をするが、偶然乗り合わせたトラックがひき逃げ事故を起こすのを目撃してしまう。家出先で世話になった老人と孫娘の相続問題に巻き込まれた上、自分の家族の問題にも向き合わざるを得なくなっていく。

 わたしの中では過去の遺物となっていた「教育ママ」が出てきて、びっくりしました。この母親がホントにひどい親で、秀一が友達に送った手紙を、娘(秀一の妹)を使って郵便局のポストから盗みだし、秀一に届いた手紙を無断で開封した上に捨ててしまうのだ。ふつーじゃありません。誇張されて描かれているのだろうけれど、ちょっと気分が悪くなります。
 その中で妹はともかく、男の子たちはなんとかまともに育っているのが不思議です。
 しかし、ひき逃げを言い出せない秘密、家出先の家に伝わる信玄の埋蔵品伝説、友達になった夏代の出生の秘密など、次から次へと事件が起き、結局一気に読んでしまった。

 秀一という主人公に、とても懐かしい感じがしたのだけれど、この作者って、あの「あばれはっちゃく」の原作者なんですね。納得。
 「懐かしい感じ」はするのだけれど、今の子どもたちにこの作風はなじめるのだろうか。