ゲゲゲの女房「貧乏神をやっつけろ!」「連合艦隊再建」「初めての里帰り」

 さぼっている間に、藍子ちゃんが育ってしまった。
「貧乏神をやっつけろ!」
 おとうちゃんとおかあちゃんの手作りのひな人形。子どもの初節句祝いを生活費に変えなければいけないほどの貧乏どん底であっても、あんまり悲壮感がないのがいいですね。不動産屋さんとか、借金の取り立ての人たちも、みんな、「生活」してるんだなーという存在感があって、憎めない。特に、水道と電気の人は、愛嬌があって好き(笑)。
 傘を貸してくれるエピソードと、出口のない墓場の演出はよかったです。原作では、普通に怪談っぽいエピソードとして紹介されていましたが、ドラマでは、出口のない貧乏にひっかけていて、ワザありでした。

連合艦隊再建」
 連合艦隊キタ―!
 子どものミルク代にも事欠く中で、なぜか夫婦そろってプラモデル作りに熱中してしまう、という原作でも好きなエピソードのひとつです。布美枝ちゃんは、さすがに最初は受け入れられないようでしたが(当たり前だ)、それを諭すのが「こみち書房」の旦那さんというところに、登場人物の配置の妙を感じます。
それにしても、悪書追放の人々の感じの悪いこと。子どもの非行をマンガのせいにするのは、ホゴシャの怠慢じゃないのかね。でも、ここまで誇張されると、今の東京都の条例騒動とは、別問題のような印象にならないかな…といらない気をまわしてしまいます。現代とのシンクロには驚きますが、別に狙ってこの時期にこのエピソードをもってきたわけではないんですよね。マンガはずっと「表現の自由」と「青少年の健全育成」との間で戦ってきたわけだ。
夫婦の愛情物語に終始せずに、マンガをめぐる出版業界の問題を、作品の雰囲気を壊さない範囲でちゃんと描いているところも、見ごたえのひとつだと思っています。

「初めての里帰り」
 藍子ちゃんかわいーっ! 色素が薄くて、西洋人形みたい。従兄弟の俊文兄ちゃんのマネをして、一生懸命ヘンな顔をしているのが可愛かったなあ! 誰か気づいてあげようぜ。あのくらいの年頃だと、母親はほとんど子どもから目を離せないと思うのですが、ときどき藍子ちゃんが消える不思議(笑)。道原かつみさんのブログを読んでいたら、「あれは座敷童」と書いてあって爆笑しました。
 源兵衛さんは相変わらずでお元気そうでなによりです。子どもの将来を親が一方的に決めてしまうという、源兵衛さんが悪者になってしまいそうな流れなのに、貴司さんの優柔不断ぶりが諸悪の根源のように見えてしまうのは、わたしが父さんびいきなせいかしら。選択の結果を引きうけるのは自分自身しかいないのだから、誰かからこう言われたから、ということが言い訳にならないように、自分で選択するしかないんですよね。
 そして、来週はいつか来ると思っていた「こみち書房」の閉店…なのか。

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ
 京都も大学生も出てこない、森見登美彦の新境地。
 「ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。」という主人公のアオヤマ君と、友達のウチダ君、チェスの強いハマモトさん、腕力少年のスズキ君という顔ぶれと、彼らの日常見ていると、吉野朔美の『ぼくだけが知っている』が思い浮かびます。
 少年たちの冒険と、淡い初恋、そして町を巻き込む不思議な現象、と題材は面白かったのですが、なんとなくものたりない…。…具体性に欠けるというか、手ごたえがない? 描かれている郊外の町や、重要なキーアイテムであるペンギンに、現実感がないように感じました。京都の町はあんなに鮮やかに描けるのに。いや、これは、私が京都に住んでいるからで、郊外に住んでいる人にはリアリティがあるのかもしれないな。
 今回はピンときませんでしたが、好きな作家が新境地にチャレンジするのは、大歓迎です。