雪は天からの手紙

雪は天からの手紙―中谷宇吉郎エッセイ集 (岩波少年文庫)
 暖かい国で生まれ育ったせいか、雪には特別なあこがれがあります。ウィンタースポーツには興味がないけれど、雪がしんしんと降り積もるところを見るのが大好き。雪の本とみるとつい手に取ってしまいます。
 科学者であり啓蒙家である池内了が若い人に向けて編集した中谷宇吉郎のエッセイ集。非常に詩的な表題ながら、その意味するところが真に科学的であることが中谷宇吉郎博士の本質を突いていると思います。中谷宇吉郎は世界ではじめて雪結晶を人工的に作り出すことに成功した人物で、人工の雪結晶を様々な条件で生成した結果、雪結晶は湿度や温度によって形が決まってくることを突き止めました。つまり、降ってきた雪結晶の形を見れば、上空の温度湿度が分るということ、それを「雪は天からの手紙」と表現したわけです。さすが寺田寅彦の弟子。
「雷獣」や「千里眼」などの不思議なことを取り上げても、視点が独特で読みが深い。科学する心のキラキラした輝きが凝縮されているようなエッセイでした。
 ついでに私の好きな雪の本を紹介。
蟲師 (6) (アフタヌーンKC)蟲師6
「雪の下」に虫眼鏡で雪の結晶を観察しているギンコが出てきます。
雪花譜―自然の造形美と不可思議の世界 (講談社カルチャーブックス (103))雪花譜
科学的なことだけではなくて、雪にまつわる昔話や道具類、雪をモチーフにしたデザインなどがカラー写真で紹介されていて見ていて飽きません。これに載ってる「雪まくり」の写真が「雪団子蟲」が作る雪玉そっくり!
雪の写真家ベントレー雪の写真家ベントレー
世界ではじめて雪の結晶を写真に収めることに成功したアメリカの農夫の伝記絵本。在野の科学者ってところがギンコを思わせます。定住してるから村専属の蟲師かな。
スノーフレークスノーフレーク
ため息が出るほど美しい雪の結晶の写真たち。解説は高度に専門的ながら、素人にもきちんと分るように丁寧なのが好印象です。
雪の結晶―冬のエフェメラル雪の結晶〜冬のエフェメラ
鼓型や針状結晶など、珍しい型からよく見られる六角形のものまでいろいろな種類の雪の結晶を紹介したコンパクトなもの。観察方法なども紹介されていて、薄いながら充実の内容。