片耳うさぎ

片耳うさぎ

片耳うさぎ

 広くて暗い重厚な旧家の様子や、「最後の本物のお嬢様」である祖母の厳格なたたずまいが、小学6年生の奈都の視点でとてもいい雰囲気に描かれていました。謎は、舞台となる蔵波邸そのもので、昔養蚕をしていたらしい屋根裏とか、主人公の幼い記憶に残る小部屋とか、祖母の出生の秘密とか、子どもにとっては畏れまじりのわくわくするような設定が生きています。ミステリーとしては弱いのだろうけど、『安楽椅子探偵アーチー』に続いてミステリーランドとかに入ったらいいのにと思いました。甘やかされて気の弱い、現代っ子の主人公が、意外な名探偵ぶりを発揮するので、カタルシスもあるし。