少女七竃と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人

 「痛切なストーリーが胸を抉る衝撃作」とか「青春暗黒ミステリー」とか言われてて、暗くて痛くて救いがなさそうなので、手に取るのを心底びびっていた桜庭一樹です。おっかなびっくり図書館の棚から抜き取ったのは、桃姐が「爽やかでたくましい物語」と評していたから。あと、枕頭でちびちび読んでいる『遠野のザシキワラシとオシラサマ』(佐々木喜善、中公文庫)の文庫版解説がうつくしかったからだ。こんな文章を書くひとなら、信じてもいいかもしれない、と思った。
 奇妙な浮遊感のある、独特な文体で、幼い頃から分かちがたく結びついていた少年と少女が決別する物語が描かれている。各章の書き出しがどれも秀逸で、うっとりしてしまう。言葉の選び方がいちいちセンスがいいんだよなあ。「いたい」という言葉をひらがなに開いて、次の言葉につなげるとことか。
 ぐずぐずで、自分勝手で、たくましい大人たちの様々な思惑が、泥流のように渦巻いているなかに、必死で踏ん張って凛と立つ少女と少年の姿の美しさ。彼女と彼が、どんな大人になるのかの想像がつかないことが切ない。きっとそれなりに生きていくのだろうけれど、それでも七竈と雪風の時はこの時止まったのだ。