帰ってきた船乗り人形

帰ってきた船乗り人形

帰ってきた船乗り人形

 原書は1964年。女の人形ばかりのローリー家に、カーリーという名の水兵服を着た男の子人形がやってきた。カーリーは人形を心から愛するショーンと、優しい家族に囲まれて幸せに暮らしていたが、一家にときおり暗い影がさすことに気づく。それは、一家のお父さんとお兄さんが行方不明になってしまったからだった。いつか、二人を探しに行くことを願っていたカーリーは、ある日窓辺から落ちて、船乗り学校の少年に拾われる。カーリーは、行方不明の二人を探しだし、ショーンや家族の元へ帰ることができるのか…。
 ゴッデンの人形の話は、人形が魂を持つファンタジーと、ごっこ遊びのリアリティが絶妙なバランスで両立していて、読むたびに引き込まれてしまいます。今回は主人公の人形も、重要な登場人物である船乗り学校の生徒も、男の子で人形遊びなのに、どこか勇ましいところがユニークです。このベルトラン少年は、高慢がすぎて、家族にも親戚にも持てあまされた結果、船乗り学校に放り込まれるのですが、本当に鼻持ちならないイヤなやつなんですよ(笑)。
 「人形の家」が、私的にはとても悲しい結末だったので、ルイスさんに何かあったらどうしようかとやきもきしましたが、今回は文句のつけようのないハッピーエンドでほっとしました。
 細部まで凝った西洋のドールハウスを、見事に視覚化した挿絵もよかった。