第二十五話「眼福眼禍」

脚本 伊丹あき
絵コンテ 今泉賢一
演出 今泉賢一
原作 『蟲師』5巻「眼福眼禍(がんぷくがんか)」p57〜

蟲師 (5)  (アフタヌーンKC)

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 この「眼福」という蟲はどういう生態の蟲なんでしょう。「視られる事で眼に宿る蟲」「目玉を別のものへと組成させやがて完全に乗っ取ると身から離れていく」とギンコは解釈しています。山で周がきのこを探しているときに眼の中にひろがった花のようなモノが「眼福」の本体なのでしょうか。そうすると、周が目を開いたときに最初に見えた紫色の茎のようなモノから花が咲いていて、それを「視た」人の眼の中に花の姿をした「眼福」が飛び込んでくる、ということかな。…あ、周は「この眼玉の命が終わる瞬間まで」と言っていたから、次の眼玉に宿る「花」は「眼福」の子孫なのかもしれません。「眼福」は寄生虫のように眼玉に宿り、宿主の目に映るモノを食べて成長し(だから宿主に様々なものを見せるのかも)、成長しきると眼玉を繭のようにして宿主から離れる。その繭が破られると、素早く逃げて土に潜り、そこでさらに茎を伸ばして子孫である「花」を咲かす。その「花」を眼にした眼玉に子孫である新たな「眼福」が寄生する、のかなあ。
 もう一つ気になるのが、次の「眼福」を宿した、獣のその後です。けものには時間感覚がないといいますから、未来や過去を「視て」もあんまり意味ないですよね。獲物や天敵を見つけるのに便利だから、人間よりはうまく共生してやってけるかも。

・今回の絵コンテは「虚繭取り」と同じ人。「虚繭取り」では原作からのコピーが多かったですが、今回はすべて手書きでした。絵の雰囲気は原作に近い淡泊な感じ。
・原作では、目が見えるようになった周の回想シーンで、着物の柄が違います。冒頭カラーでは、縦縞の柄、ギンコに語っている場面では草の葉を散らした小紋です。アニメでは縦縞で統一されていました。
・周が眼福を眼に宿したのは10歳くらい。目を閉じていると過去や未来が見えるようになったのは14歳くらい。
・原作と絵コンテ「すると主は奥の間へと誘い入れ天井をば指さしにけり」が、アニメオンエア版ではなくなっています。DVDでは復活しているのかな?(友人へ貸出中)
・絵コンテでは眼玉にメスを入れる父親が異変に気づくカットが挿入されていますが、アニメオンエア版ではこのカットは削除されています。さらに「瞼の光」の注射シーンと同じくぼかしが入っています。眼球に傷をつけるのが何か規制に引っかかるのでしょうか。
・原作では周の視た父親の未来は、ただ山中を歩いているだけでしたが、アニメオンエア版では足を滑らせて落ちるところまで周は視ています。「見えたものは変えられない」と分かっていたから止めなかったのではなく、それで死んでしまうとは思っていなかったのでしょう。いくらあきらめていても、父親の死はなんとしても止めたいと思うでしょうから。
・ふふふ、ギンコが文を出した「知人」とは、やはり淡幽ですよね(にやにや)。ちらりと見えた文面は「狩房文庫ニテ調ベシガ 治療法未ダ不明」というのではないかと。
・第十二話「眇の魚」テレビオンエア版で黄色かった月は、ギンコの台詞通り白い月になっています。地平線に近いほど、観察者から遠くなり、あいだにある空気の層は厚くなります。空気には不純物が混じっているため、波長の長い赤い色がもっとも邪魔されずに遠方まで届くのだそうです。つまり、山の端にかかっている月が真っ白いのは非常に不自然ということです。
・ギンコが木箱の引き出しを開けるシーン「#18の作画BANK描き足しでも良いかも」と絵コンテさんが描いたところ「新作で!」との突っ込みが入っています。
・ギンコが周に自分の過去を話した時の月は、半月。周から眼玉が離れた夜は、満月。一週間ほどギンコは周と一緒の宿で泊まったんですね。路銀は…?
・眼福を捕まえたギンコ。絵コンテに「ビチビチあばれます(イキがいいです)」と書き込んであったのが笑えました。