海

 よくこんなこと考えつくよなあ、と小川洋子の作品を読むたびに思います。ありそうでなさそうなモノや職業を描いて、読者を一瞬で別の世界に連れて行ってしまう。
 高松に住む祖母に教わって4年前に縫った綿入れ袢纏を、おとといほどきました。あちこちほつれたり、綿が偏ったりしたので、打ち直しをしないといけないからです。祖母がつくった袢纏は、しっかりした縫製で10年以上暖かく私を包んでくれたのに…。私たちの一族を寒さから守り続ける祖母の綿入れ袢纏。柔らかな綿に包まれたような、穏やかな瀬戸内海を望む高松に住む祖母。だから、手芸とマリンライナーの物語である『銀色のかぎ針』は私にとってだけ特別な作品なのでした。