西遊記 宝の巻

西遊記〈5〉宝の巻 (斉藤洋の西遊記シリーズ (5))

西遊記〈5〉宝の巻 (斉藤洋の西遊記シリーズ (5))

 「西遊記」を斉藤洋が独自の視点で書き直したもの。巻措くあたわざる一級エンターテイメントに仕上がっていて、大プッシュの児童書なのだ。「斉天大聖美猴王(せいてんたいせいびこうおう)」だの「碗子山波月洞(わんしざんはげつどう)」だの、固有名詞はほぼ原本をそのまま使用していて、中国ものの雰囲気をよく残してある。頭がよく、気の強い悟空が、規律と形式を重視する天界と丁々発止とやり合う場面は、胸のすくような痛快さ。一方的に押しつけられる理不尽さに対抗して暴れ回る悟空の心情を、現代的な視点で描くことで、読者のキャラクターへの感情移入を容易にしている点が実に見事なのだ。真面目一徹で融通が利かず人を疑わない玄奘三蔵法師と、しょっちゅう誤解されてケンカしつつも何故か気になってしまう悟空のすれちがいっぷりも萌えどころ…ってあれ?
 広瀬弦氏の挿絵も丁寧に描き込まれていて、キャラクターの良さが伝わってくる。とにかく続きが楽しみなシリーズ。