水銀虫

水銀虫

水銀虫

 最近のホラーでここまで素直な因果応報話を書くのは珍しい。悪いことしたやつは地獄に堕ちるぞ〜というやつ。これも揺り戻しのひとつかな。
 殺人、人肉食、近親相姦などのタブーを犯した人々の絶望を淡々と描く短編集で、救いが全くないという点では今までのノスタルジックなイメージとは変わっているように見える。でも、読後感はあまり変わらないんだな…死者が側にいるという生々しい感覚を残せるのはこの作者の特徴だと思う。
 殺人はともかく、人肉食と近親相姦に関しては、私の中でのタブーは(文学上では)強くないので、そこまで追い詰めなくてもいいのに、と思いました。特に子どもには全然罪はない。