メイフェア劇場の亡霊

メイフェア劇場の亡霊

メイフェア劇場の亡霊

 NHK新日曜美術館で「イングランド美の旅・名作の故郷“カントリー”を訪ねて」を見たばかりだったので、とてもタイムリーだった。「見慣れた風景」が史実に基づくということが分かるというのは、嬉しいものだ。
 風景画ばかりが並んでいる静かな美術館に、一人たたずんでいるような気持ちになる掌篇集。どの絵もじっくり見るほどに滋味がにじみだし、気がつくと自分がその風景の一部になっているような…。
 不思議な話ばかりではなく、日常のほんのささやかな一コマを切り取ったものが多いのだが、どれも実に気が利いている。「帰り道」の友情以上恋愛未満の男女の会話の、可愛らしくもおしゃれなこと。
 ウィリアム・モリスの表紙も素晴らしい。