時をかける少女

 最初は、主人公のあまりの猪突猛進ぶりに引いてしまっていました。
 ところが、この性格がその後の展開に、重要な伏線になっていました。タイムリープという不思議な力を手に入れても、原因や理屈には全く悩まないというのに非常に説得力のある性格設定なのです。些細な日常の失点をごまかすためだけに、驚くほど軽い気分で「やり直し」を繰り返すのですが、「まあ、この子なら仕方がないかな」と思わせます。
 その場その場の気分で条件反射的に対応しているだけで、決して悪い子ではない、というのも、中盤からの主人公の成長を自然に見せていました。

 そして、ぜんぜん感情移入できなかったはず彼女が、最後の時間跳躍をするために「跳んだ」とき、全く自分でも思いもよらないことに涙があふれてきました。無思慮無分別としか思えなかった無謀さは、純粋なひたむきさとして素直に胸に落ち、ただ目の前の「大切なもの」を必死で追いかける熱い思いに、激しく揺り動かされてしまったのです。

 まぶしい光あふれる夏の景色、リアルでありながらどこか懐かしい校舎、重要なシーンに幾度となく登場する夕焼けの川べり…見慣れているはずの日常の風景が、はっとするほど美しく描き出された美術も見応えがありました。

 原作と過去の映像作品へのリスペクトを感じさせる一方で、現代の少年少女への思いの込められた、素晴らしいリメイク作品でした。日程があえば、もう一度見てみたいと思います。